福岡県北九州市門司港。海峡の先には山口の下関が見える、九州最北の地。駅の看板がかわいくてインスタ映え。駅周辺にはレトロな建物が多く、まるでリトル・ヨコハマみたいなオシャレな場所。彼女の友だちがここに住んでいて、それで1週間程滞在していた。
駅前は比較的若者が多いが、駅から少し離れると見渡す限りおじいちゃんおばあちゃん。とにかく若者が少ない。65歳以上の割合が全国平均で3割弱のところ、門司は4割超えてるそう。そんなおじいちゃんおばあちゃんが多い商店街がある。中央市場。小さいお店がたくさん並んでいて、営業していないお店も多いが頑張って営業してるお店もいくつかある。小さな八百屋さん、本屋さん、雑貨屋さん、バーみたいな場所も。お世辞でも売り物に見えないガラクタを売ってるけど、近所のおばあちゃんたちが集まっておしゃべりする場所を提供してると思ったら、それはそれでもういいのかもしれない。
そんな中、少し歩いていくと「焼肉」という文字の赤提灯がある。店内にはテーブル席が1組(4席)のみ。奥には厨房があり、それでいっぱいいっぱい。いっぺんに1組のお客さんしか食べることができないタイプの小さな焼肉屋さんだ。通路沿いなので食事してると通る人に見られる(といってもそんなに人通りはないのだが)。友だちと一緒だったので入れただけで、多分1人だったら怖くて入れない。
オーナーはいっけん見ちょい怖な70歳くらいのおじいちゃん。動きがとてもゆっくりで喋り方もゆっくりで、喋ってるのを聞くと全然怖くないのが分かる。
メニューは意外と種類が多く、単品料理も多い。ただここの定番は「焼肉定食」¥1,500、こちらを3人前注文。店内は韓国の調味料があったり、テイクアウト用のセットも置いてたり、席の後ろには洗面台みたいなのがあるけど狭くて手が洗える感じではない。おじいちゃんの厨房もすぐそばで料理してる様子が見える。ゆっくりではあるが慣れた手付きで料理をさばいていく。
10分くらい経って、野菜の漬物登場。けっこう1皿で量があるから3人で分けるのかなと思いきや1人ずつ。続いてお肉登場。上ロースだっけかな、霜降りがいい感じ。玉ねぎとピーマン添えて1人5枚程。さらに玉子のスープとご飯とサラダも。これで¥1500は大満足の量。
こんなところでテーブル席1つしかない焼肉屋を開くおじいちゃん絶対おもしろい人だと思い話かけてみたらいろいろとお話してくれた。ここで店を開き出したのは2年程前。それまでは別の場所で45年程焼肉屋をやっていたそう。そっちではもっと規模も大きくテーブル席も多く、朝から晩まで一生懸命仕事をしてたそう。そしたら病気が発覚して仕事が続けられなくなる。病気を治すことに専念してお店を畳んだそう。幸い病気は落ち着いて、家でゆっくりする生活が始まったが、これまで朝から晩まで頑張って仕事してた分、逆に何もやらないことで暇になってつまらなくなってしまい、寝れない日が続いたそう。そんな中この商店街で焼肉屋をやることになり、当初は息子か孫かにもう歳だからゆっくりしてほしいと反対されたそうだが、何かあった時用に前のお店のテーブル席を1セットだけ自宅で保管してたそう。そのテーブル席を使ってまた始めることにしたのだと言う。
お店に行かないといけないという、朝起きる理由がちゃんとできたし、夜までちゃんとお店に立たないといけないという理由がちゃんとできた分、毎日ちゃんとやることができて、帰ったらぐっすり寝れるようになって健康になったそう。
既に定年も過ぎてることもあり、こっちの店では前のように利益のために頑張りすぎない、自分ができる範囲のことだけをやる、と決めたそう。だからテーブル席もっと増やせばいいと言われても(僕も最初は目の前のスペースとかもっと活かして席数増やせばいいのに、みたいな邪道なこと考えてた)今ある1テーブルから増やすつもりはない、とのこと。
毎日仕事忙しいもう仕事したくないし早く年末年始にならないかなーゆっくりしたいなーなんて思っていざ年末になっても、数日で実家暇で飽きたー仕事したいーってなるのと似たような感覚かな。
いつまでも元気でお店を営んでもらいたいです。また門司港戻った時食べに行きますね。
終わり。
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