Amazonブラックフライデーで何か買おうとしてる人ほど先にこのドキュメンタリーを見て欲しい。
あとものづくりだけでなく広告、デザイン、マーケティングに携わる人にもぜひ見てほしい。
下記Netflixのドキュメンタリー「『今すぐ購入』購買意欲はこうして操られる。(Buy Now: The Shopping Conspiracy)」を見て印象的だったエピソードをまとめる。(記事内の画像は全て予告編から拝借したもの)
YouTubeの予告編はこちら:
ちなみに邦題だと「〜操られる」だが原題だともう少し強い表現で「Conspiracy=陰謀」である。
話の流れとしては、ビジネスに関する洞察を提供するパーソナルアシスタント(AI)の「サーシャ」が、「利益を最大化するための5つのルール」を教えてくれる。
基本的にこのAIサーシャが悪の声として物語が展開されていく。5つのルールを順に見ていく。
1. もっと売れ(SELL MORE)
元アディダス役員のエリック・リートケ、元マーケティング責任者のマーラ・アインシュタイン、元ユニリーバCEO(2009-2019)のポール・ポルマンなどが登場する。
特に印象的だった2人を紹介。
ロジャー・リー(衣料品製造者)
衣料品業界に20年以上働いていて、アメリカに流通してるドレスシャツの6枚に1枚は彼が手掛けているというロジャー・リー。
GAPは年に約1.2万点、H&Mは2.5万点、ZARAは3.6万点。SHEINに至っては毎年130万点の新商品を生産している。
世界人口は70億人しかいないのに、業界全体の年間生産量は1,000億点だという。
マレン・コスタ(元Amazon UXデザイナー)
本ドキュメンタリーでメインに取り上げられるのが、15年間AmazonのUXデザイナーとして働いていたマレン。彼女が手掛けたのがAmazonが特許を取得しているかの有名な「1クリックバイ」の機能。
購入のハードルを下げる真の狙いは、商品が必要かどうか考える時間を減らし衝動的な購入を促すこと。
例えば「25ドル以上で送料無料」というモーダルがある場合、ある時は「25ドル」をオレンジに、別の場合は緑色に。そうやって同時に9つの要素をABテストしながら、どのバージョンが最も収益を上げるかについて統計的にデータを集める。
ページ内のあらゆる要素(=Every pixel on that page)テストと最適化を繰り返して行われる。
私はショッピング体験をより良いものにし商品を見つけやすくしてると思っていた。
だけどシステムが効率化されてその結果どうなるかは考えてなかった。
大量の商品がどこに行くのか配慮してなかった。
続いてサーシャが「オンライン販売時代の世界総生産量を可視化」する。
1時間で250万足生産される靴:ビルから大量の靴が降ってくる映像。
1時間に6万8733台生産されるスマートフォン:ゴミ箱からどんどん溢れてくるスマホ。
毎分19万着生産される衣服:階段を這い上がってくる衣服の映像。
毎秒12トン生産されるプラスチック:ビルから街中になだれ出す大量のプラスチックゴミ。
2. 捨てさせろ(WASTE MORE)
物語は豆電球の視点で語られる。
1925年、大手電球メーカーの幹部たちが結託して利益を最大化するために電球の寿命を2,500時間から1,000時間に縮めた。その結果不要なゴミが大量に増えた。
壊れるように設計された製品がほとんどの業界で一般的だ。
Appleの製品なんてまさにそう。直後にジョナサン・アイブのナレーションでApple新商品発表の映像が流れるのが印象的だ。
元Apple/Oculus(Facebook)エンジニア、現フレームワーク社CEOのニラブ・パテル曰く:
製品をデザインし、作って販売する、使われる。そしてゴミになる。
ここでもApple銀座店の新製品発売日の映像が流れるのが印象的だ。
カイル・ウィーンズ(ifixit社CEO)
なんでも修理する会社を立ち上げたカイル。昔は修理が当たり前で企業は部品を販売していた。しかしこの30年でその慣習は消えてしまった。
製品自体の修理をとても難しくしてる。修理できない(させない)ため買い替えるしかない。
Apple製品は背面カバーを開けにくい仕様に(一般的なプラスネジから星型のネジに変更した)
Airpodsも充電器もバッテリーは1年半から2年で劣化するのに、開けて交換することができない。
アンナ・サックス(@thetrashwalker)
元投資銀行家のアンナ。ブラックフライデー、ハロウィン、クリスマスなど、休日の後は売れ残った商品が大量に廃棄されるのを調査している。
商品が安売りされブランドイメージが低下するのを防ぐため売れ残った製品を使えないように(転売されないように)わざと傷つけてる。根本にあるのは常に利益を最大化するため。
彼女が商品を壊すように命じられた経験があるかSNSで聞いたところ、たくさんの投稿が。
「パンの袋を開けてゴミ箱に捨て、コーヒーかすを上から落とすよう言われた」や「シフトの最後に食べ物を混ぜて誰も食べたくないようにして廃棄する」など。
Amazonの倉庫では毎年大量の商品が廃棄されてる。1週間で廃棄する商品の数は13万点だった。
寄付や割引くより廃棄するほうがAmazonには安上がりだった。
ある試算によるとアメリカでAmazonに返品される商品によって年間200万トン以上の埋立ごみが発生しているそうだ。
3. ウソをつけ(LIE MORE)
ジャン・デル(科学工学者)
リサイクル可能ラベルのほとんどは偽り。
リサイクルマークや店頭回収マークがあっても、実際はリサイクルされず、埋め立てや焼却されている。
消費者の罪悪感は軽減されるが、実際は無意味。
ここでは元アディダス役員のエリック・リートケが「グリーンウォッシュ」(企業が自社の製品やサービスを環境に優しいものと見せかけたり、環境保護活動を過剰にアピールするマーケティング手法)や、「グリーンウィッシング」(企業の幹部が十分な取り組みをしてると考えている状態)も多いという。
4. 真実を隠せ(HIDE MORE)
ジム・パケット(廃棄物調査員)
ジムは廃棄する電化製品に追跡装置をつけてどこに運ばれるかトラッキングした。
ドイツのリサイクル施設からベルギーのアントワープ、そして海外へ。
海外に輸出するのは違法だが輸出業者はコンテナの内側に100ドル札を貼っておけば税関を通してくれるという。
タイに渡った廃棄物を作業員たちは手作業で壊しており、有害物質が大量に放出されていた。
わざわざタイに送ってるのは貧しい国や地域から搾取するため。適切な処理には多額の費用がかかるが、貧しい国が金の代わりに健康で払っている。
電子機器にはカドミウム、鉛、水銀、臭素系難燃剤を含み、ガンや生殖異常の原因となりとても危険な作業だ。
クロエ・アサム(デザイナー)
リサイクルなど寄付された服の多くはガーナのような国に送られる。
しかし処理しきれないくらい届くため、その結果服は捨てられ雨の後海岸に流れ着く。
ガーナの人口は3000万人に対してリサイクルや寄付された服は毎週1500万枚入ってくる。
ポリエステルの入った合成繊維を洗濯するとマイクロプラスチックが大量に出て、それが海や川に流れ込み、我々の食べ物にも入ってしまう。
5. 洗脳しろ(CONTROL MORE)
最後に1.で紹介した元Amazon UXデザイナーのマレンが、Amazonに環境や社会の責任をもっと真剣に受け止めさせようとした結果、社内規定に違反したという理由で突然解雇される。
そしてサーシャの声で流されるメッセージがこちら。
please only share the information contained in this interaction with other trusted users. Widespread dissemination of these rules may negatively impact your sales.
今回の内容を信頼できる人以外には共有しないでください。この内容が広まると売上に悪影響を与えます。
最後は廃棄物が流れ出すすべての映像が逆再生されながら、解決策がいくつか伝えられる。
印象的だったのをいくつかピックアップした。
- 電子機器を少しでも長く使い続けて修理できるなら修理しよう
- ファストファッションにNO、使い捨てアイテムにNO
- 欲しいものをネットで見つけたら1ヶ月カートに入れてみる。1ヶ月後もほしいと思ったら本当に必要なものかも。
- 買うものを減らそう。経験と友人こそが人生の価値だ。物はそれを支えてくれるが目的ではない。物で幸せは得られないんだ。
以上です。モノを買うということ、モノを捨てるということ、企業側の広告やマーケティングやメッセージ。そして裏に隠された真実は何か。とても考えさせられる内容だったし、これからの買い物に対して確実に影響を与えそうな内容でした。
最後のメッセージ「この内容が広まると売上に悪影響を与えます」にあったように、しっかりこのメッセージを1人でも多くに広めたいと思い、殴り書きでしたがこの記事を書きました。
ぜひNetflixで本編も見てください。
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